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国立環境研究所地球環境研究センター 前の記事目次次の記事 --> 前の記事目次次の記事 前の記事目次次の記事 --> 2018年7月号 [Vol.29 No.4] 通巻第331号 201807_331010 最近の研究成果 ディーゼル乗用車を優遇する政策は気候変動対策に寄与したのか 欧州のディーゼル乗用車の排出ガス不正について 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 主任研究員 田中克政 欧州では過去20年ほどの間に多くの国でディーゼル乗用車(以下、ディーゼル車)が導入促進されて市場シェアが拡大したが、近年、ディーゼル車から排出される大気汚染物質による健康影響に対して懸念が広がっている。いくつかの都市では(例えばパリやオスロ)、ディーゼル車の乗り入れを禁止する方向に向かい始めた[1]。 ディーゼル車はガソリン車と比較して燃費が良く、二酸化炭素の排出量が相対的に少ないので、欧州では過去に政策としてディーゼル車が優遇され、ディーゼル車の市場シェア拡大が気候変動の緩和に寄与すると考えられていた。他方、ディーゼル車が窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などの大気汚染物質をガソリン車よりも多く排出することも知られていたが、排出ガス対策装置(いわゆるクリーンディーゼル技術)により、これらの排出を規制値以下へ抑えることが出来るとされていた[2]。 しかしながら驚くべきことに、アメリカでの路上走行検査によって、フォルクスワーゲン(VW)社の一部のディーゼル車が規制値の最大約40倍の窒素酸化物を排出していることが分かった(平成27年9月に米国環境保護庁から発表)[3]。さらに、実験施設上の車両検査では、窒素酸化物の排出が規制値以下に抑えられるように不正ソフトで制御されていたことも明るみになり、排出ガス不正事件「ディーゼルゲート」に発展した[4]。 研究者のコミュニティーはこの問題に迅速に対応し、対象車の窒素酸化物の超過排出が、どの程度人間の健康に影響を与えうるかを示した[5]。さらに窒素酸化物の排出は、温室効果ガスであるオゾンやメタンの大気中濃度を変化させ、気候にも影響を与えうる。本研究では、ディーゼル車の市場シェア拡大が気候変動の緩和に役立つという主張に立ち返り、排出ガス不正に関わったディーゼル車についてもその気候への影響の見積もりが妥当かを調査した。 本研究の簡易気候モデルを用いたシミュレーション結果によると、窒素酸化物を超過排出するディーゼル車の市場シェア拡大は、窒素酸化物の複雑な気候影響により、必ずしも気候変動の緩和に寄与しているとは言えないことが示唆された。一般的にディーゼル車は路上での実走行の条件では規制値の何倍かの窒素酸化物を排出することが知られている[6]。したがって、本研究はより一般的にディーゼル車導入促進に使われた「気候変動対策に寄与する」という議論に、疑問を呈しているともいえる。だが、実際の路上での排出ガス排出量は車両の状態、運転の状況、気象条件などの様々な要因に依存し、現実的な気候影響の評価にはさらなる研究が必要である。近年、日本でディーゼル車の市場シェアが増加する傾向にあるが[7]、本研究がディーゼル車一般の気候や環境への影響について考慮する機会になればと思う。 なお、原著論文の発表と同時に、本研究は海外で報道発表[8]が行われ、海外メディア[9]で報じられた。また本研究は、掲載された国際学術誌Environmental Research Lettersでハイライト論文(Featured Article)として紹介された。論文や本記事で述べられている見解は、著者独自のものである。 脚注 “Move is on to ban diesel cars from cities” by Nils Zimmermann in Deutsche Welle on 26 February 2018. Cames M, Helmers E (2013) Critical evaluation of the European diesel car boom - global comparison, environmental effects and various national strategies. Environmental Sciences Europe 25:1-22. Thompson GJ, Carder DK, Besch MC, Thiruvengadam A, Kappanna HK (2014) In-use emissions testing of light-duty diesel vehicles in the U.S. West Virginia University. “Volkswagen Says 11 Million Cars Worldwide Are Affected in Diesel Deception” by Jack Ewing in New York Times on 22 September 2015. Barrett SRH, Speth RL, Eastham SD, Dedoussi IC, Ashok A, Malina R, Keith DW (2015) Impact of the Volkswagen emissions control defeat device on US public health. Environmental Research Letters 10:114005. Franco V, Posada Sánchez F, German J, Mock P (2014) Real-world exhaust emissions from modern diesel cars. The International Council on Clean Transportation. “Darum boomen in Japan Dieselautos” by Tom Grünweg in Spiegel on 13 November 2017. イギリスの学術出版社Institute of Physics (IOP) Publishingとノルウェーのオスロにある学術研究機関CICERO Center for International Climate Researchとの共同で2018年4月3日に報道発表「‘Dieselgate’ impacted climate as well as human health」(和訳:ディーゼルゲートは健康だけでなく気候にも影響)を行った。URLは以下を参照。 http://ioppublishing.org/dieselgate-impacted-climate-well-human-health/ http://www.cicero.oslo.no/no/posts/nyheter/dieselgate-paavirket-baade-klima-og-helse 主要メディアによる取り上げの例として、ドイツの全国紙ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)のBackground Energie & Klimaのセクションで「Neue Zweifel am Klimaschützer Diesel」(Jens Tartler著)(和訳:気候を守るとされるディーゼル車へ新たな疑い)として紹介された。 本研究の論文情報 Climate effects of non-compliant Volkswagen diesel cars 著者: Tanaka K., Lund M. T., Aamaas B., Berntsen T. 掲載誌: Environmental Research Letters, 13, 044020, DOI: 10.1088/1748-9326/aab18c. 前の記事目次次の記事 目次: 2018年7月号 [Vol.29 No.4] 通巻第331号 パリ協定の温度目標とゼロ排出目標は本当に整合しているのか? 両目標は必ずしも一致しないが、今世紀中盤までにCO2実質ゼロ排出が必要 温暖化対策を気候モデルでどう理解するか 統合的気候モデル高度化研究プログラム平成29年度公開シンポジウム開催報告 国立環境研究所の強みを生かす研究を—理系と文系の境を越えて —森口祐一さんに聞きました— わが国の2016年度(平成28年度)の温室効果ガス排出量について 〜総排出量13億700万トン、三年連続の排出量減少〜 IoT時代における環境にやさしいスマートシティを目指して 国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました 報告:対話型トークイベント「地球温暖化の疑問をなんでも語りましょう!」 寺本宗正高度技能専門員が第15回日本菌学会平塚賞(論文賞)を受賞しました 観測現場発季節のたより [13] 苫小牧の雪融け、そして観測へ 【最近の研究成果】 ディーゼル乗用車を優遇する政策は気候変動対策に寄与したのか 欧州のディーゼル乗用車の排出ガス不正について 【最近の研究成果】 2016年QBO崩壊に対するエルニーニョと海氷の影響 ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。 地球環境研究センター ニュース編集局 FAX: 029-858-2645 個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。 地球環境研究センターニュースVol.29 [2018年度]2018年7月号 [Vol.29 No.4] 通巻第331号 RSS について新着情報メール配信サービス Copyright © National Institute for Environmental Studies. All Rights Reserved.

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